人と住まいの長生き勝負!

人の寿命と建物の寿命

「あなたはいつ死にますか?」
こんなことを聞かれたら、誰しも良い気分にはなりません。しかも、答えられません。

しかし、老後のリタイアメントプランを考えるとき、「何歳まで生きるのか」ということは考えざるを得ません。残された期間によって出ていくお金の総額が変わってくるからです。

2017年7月に厚生労働省より発表された日本人の平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳です。前年よりも伸び、男性女性ともに世界第2位の長寿の国です。

「長生き」は元気で過ごせるなら喜ばしいことですが、健康面や金銭面のことを考えると、明るい要素ばかりとはいえません。老後の住まい、終の棲家についても考えておく必要がありそうです。

日本の住宅は、その50%以上が戸建て住宅(国土交通省「平成28年度 住宅経済関連データ」より)で木造が主体です。木造建物の寿命は何年くらいなのでしょうか。

国土交通省によれば、木造住宅の寿命は約30年だそうです。これは、建物が取り壊された時の平均築年数などの値から算出したものです。寿命前に取り壊してしまった建物も含むことになるので、寿命といえるかどうかは微妙です。

現在、木造住宅の寿命について引用されることが多い研究が、早稲田大学の小松幸夫教授らが2011年に行った調査で、寿命は65年です。こちらは、建築後、取り壊されていない建物の比率が半分になるまでの年数を基に算出しています。

どちらにしろ、人の寿命と比べると短くなっています。中古物件の場合には、なおさら短くなります。自分の寿命が来る前に、建物の寿命を迎えてしまった場合は、どうなるのでしょう。考えてみるとぞっとします。

戸建て住宅とマンションの寿命

戸建て住宅の場合は、建物の寿命がきてしまったとしても、何とかお金を工面して建て替えるという方法があります。
そうなる前に、水回りについては定期的にメンテナンスをしたり、家全体も手入れしたりすることによって、寿命を延ばすことも可能です。

そもそも、前出の国土交通省の寿命30年や、小松教授らによる寿命65年も、木造住宅が朽ちて住めなくなってしまう期間という定義ではありませんでした。
世界最古の木造建築物である法隆寺を引き合いに出すのもなんですが、築1400年を超えています。これは特異な例ですが、木造住宅も住み方次第といえるでしょう。

厄介なのが、マンションなどの集合住宅です。「住み方次第」といっても、リノベーションやメンテンナンスを行うことができるのは、購入した自分の部屋、つまり専有部分のみです。主要構造部分や、エレベーターや階段、廊下、バルコニーといった共用部分については、朽ちてきたところで個人ではどうすることもできません。そのために管理組合があるともいえますが、その対応は様々でしょう。
建物の寿命問題は、戸建て住宅より、マンションなどの集合住宅の方が深刻といえます。

マンションに多いコンクリート造(RC造)の建物については、その寿命はコンクリートの寿命(耐久年数)ともいわれています。国土交通省「RC造の寿命に係る既往の研究例」では、鉄筋コンクリート造の物理的寿命は117年と推定しているようです。寿命の定義が異なりますが、前出の小松教授らによる調査では、マンションの寿命は68年という結果が出ています。

100年を上回るのであれば、人の寿命よりも長くなるので安心できます。117年の寿命は、1979年の時の調査での推定ですので、現在はさらに寿命が延びているとも考えられます。しかしながら、調査をしてからまだ120年経過していないので、実証はされていません。

今後の暮らしをイメージしたプランニングが重要!

「衣食住」なくして生活していくことは困難です。歳を重ね、高齢になった時に「住」を失うことは避けたいものです。建物の寿命は、その定義づけによって様々ですが、住めなくはならないにしろ、老朽化により何らかの不具合は出てくるでしょう。少なからず、購入時にある程度の推測はしておくべきでしょう。

例えば、介護が必要な状態のときに、マンションを建て替えることになった場合などは深刻な事態となります。マンションを取り壊し、建設が終わるまでどのように暮らしていけばいいのか、それまで生き続けることができるのか、といった不安を抱えることになります。できることなら、静かに暮らしなれたところに住み続けたいと思うのではないでしょうか。

そうならないよう、購入時に、住まいが寿命を迎えることになったら、介護施設や賃貸住宅の活用などをイメージしておくことが大切です。意識していれば、それ相応の備えをすることも可能です。長寿だからこそ、このようなリタイアメントプランニングが重要なのです。

具体的にイメージできないときは、ファイナンシャル・プランナーに相談してみるのも一つの方法です。事前に相談することで、より具体的に「もしもの時の備え」をすることが可能になります。

不安を抱いたところで、どうなるものでもありません。
「今後、どのような暮らしをしていきたいのか」を事前に考えることが大切なのです。


株式会社ライフブラッサム
FP中野