個性は大事だけれど

資産価値のある住宅

「住宅を借りた場合、支払った家賃は消えてなくなりますが、購入した場合はいずれ自分のものになり、資産価値もでてきます。」といった話を、不動産販売の営業の人から聞いたことがあります。

たしかに購入の場合、魅力的な点が数多くあります。
土地の場合、眺望を重視したければ、高台に家を建てることもできます。
建物の場合、注文建築であればスタートから自分好みの設計で建てることも可能ですし、その後のリノベーションや模様替えも自由です。
しかし、資産価値という視点から眺めてみると、いくつか注意があります。

そもそも、資産価値があるものと、資産価値がないものは何が違うのでしょうか。

一言でいってしまえば、いくらで売却できるのかということです。だれも購入してくれなければ、現金化できないので資産価値はないといえます。逆に、時とともに資産価値が上がれば、購入金額よりも高く売却することも可能です。

そう考えると、あまり自分本位な個性的すぎる住まいは、資産価値の視点からみると一考を要することになります。

株式の価値はどのようにして決まるのか?

価値(価格)が変動する代表的な投資商品に株式があります。株式市場において、株価が決まるプロセスについて、大きく2つの見解が存在します。

一つは、株価は将来株主が獲得するであろう現金(キャッシュ・フロー)にもとづいて形成されるという見方です。市場参加者は、投資先を合理的に分析して株価を判断するということです。

もう一つは、株価は市場参加者の心理的要素の影響を強く受けるという見方です。ジョン・メイナード・ケインズという有名なイギリスの経済学者は、『雇用・利子および貨幣の一般理論』という著書で、これを「美人投票」に例えて説明しています。

ケインズの美人投票コンテスト

ケインズのいう美人投票とは、普通の美人コンテストではなく、「美人に選ばれた人を当てることができたら、賞金がもらえる。」というコンテストなのです。ポイントは、多くの人が投票した美人に、自分も投票することなのです。
株式市場は、このような美人投票のコンテストに似ているとケインズはいいます。

お分かりと思いますが、賞金を手にするには、「自分が最も美しいと思う人」に投票することではありません。自分には特有の価値観であったり、好みがあったりするからです。
大切なのは、「他の投票者が誰を選ぶのかを予測」して投票することなのです。

その結果、選ばれた人は、必ずしも1番の美人ではない可能性もあるわけです。

住まいの何に価値を求めるのか、それが問題

自分が最もよいと思う設計で家を建ててしまうと、資産価値という視点から考えると、他の人は「よい家」とは思わないことが往々にしてあります。そうなれば、流動性は低くなり、なかなか買い手が見つからないかもしれません。仮に見つかったとしてもその価格は低くなる可能性もあります。

また、土地についても同様です。例えば、静かな場所がいいといっても、人里離れた山の中腹あたりだったりすると、それを良しとしない人も少なくはないでしょう。

そう考えると、あまり独特な個性を出しすぎないこと、ケインズ的にいえば、「住宅を購入しようとする多くの人が、魅力的な住まいだと思うような設計」にすることが、資産価値を高めることになりそうです。

でも、せっかく家を建てるのなら、自分の思いをふんだんに取り入れていきたいですよね。住まいを購入する目的が、売却するためでもなく、人に貸すためでもないのであれば。

株式会社ライフブラッサム
FP中野