金額は正直、でもたまに嘘をつく

安ければ満足ですか?

「値段の高いもの」と、「値段の安いもの」どちらがお好みでしょうか。
なかなかお給料が上がらない時代、値段の高いものより安いものの方が良いのかもしれません。しかし、その一方で、「安物買いの銭失い」ということわざもあります。

・安くてまずいステーキと、高くておいしいステーキ
・リーズナブルな軽自動車と、高級な外車
・バーゲン品のバッグと、ブランド物の高級バッグ
・1000円の赤ワインと、10万円の赤ワイン

誰だって安くてまずいステーキより、高くておいしいステーキが食べたいはずです。しかし先立つものがなければ望みはかないません。
ここで考えたいのは、どのくらいの「まずさ」であれば許容できるのか、ということです。
そこそこのお味であれば十分、と思う人も少なからずいるはずです。

世の中、価値の高いものは、価格も高くなります。
当たり前ですが、大切なことは「価値」と「価格」のバランスなのです。

安い商品ではなく、割安な商品が好き?

例えば、「移動」という価値を求めているのならば、リーズナブルな軽自動車で十分です。
しかし、車内の「乗り心地」やスピードなどの「走り」、「ラグジュアリー感」などを重視するのであれば、軽自動車では不満が残るでしょう。

マーケティングの世界では、お値段を決めるとき、次の3つの視点で考えます。

1.コストからみた価格
2.競争状況から見た価格
3.付加価値から見た価格

一番わかりやすいのは「コストからみた価格」でしょう。
商品を販売するのにかかった、材料費や製作費、人件費などを足し合わせたものが原価になります。そこにお店の利益を乗せて、お値段が決まります。これがコストからみた価格です。
原価が見えてくると、私たちはそれ相応の対価を支払う気になります。
原価の見えにくいものに、パソコンやスマートフォンのアプリ(ソフト)があります。カタチがないため、私たちはあまりお金を出したいと思いません。

「競争状況から見た価格」も分かりやすいのではないでしょうか。
例えば、商店街に何店舗もドラッグストアがある場合、値引き合戦になることがあります。お店やメーカーにとっては、厳しい値付けになりますが、消費者からみると大歓迎でしょう。
その一方で、そこでしか販売していない商品、他にはない価値あるサービスとなると、逆に値段が高くなる場合もあります。

最後が「付加価値から見た価格」です。
私たち消費者が受け止める「価値」に見合った「価格」ということです。
同じ素材、同じサイズのバッグだったとしても、「ブランド」という付加価値をもつと、一気に価格が上昇します。
価格が高くなると、さらに魅力が増すこともあります。

「割安」「割高」という言葉がありますが、それは値段が安いか高いかという意味ではありません。私たち消費者が感じる「価値」に比べて、「価格」が高ければ「割高」であり、安ければ「割安」なのです。

値段が高いから欲しくなる?

冒頭の1000円の赤ワインと、10万円の赤ワインがあったとします。有名な芸能人が、どちらが高級ワインなのかを飲み比べて当てるテレビ番組がありますが、やはり、高いワインの方がおいしいのでしょうか。

アメリカで、「ワイン愛好家に対して5種類のワインの飲み比べをする」という実験が行われました。5種類にもかかわらず、実際は3種類しか用意せず、同じワインであっても、それぞれ異なる値札をつけました。その結果、同じワインであっても、高い値札をつけているワインの方が、満足度が高かったのです。その時の脳を調べてみると、快楽を感じる部分が活性化していたのです。つまり、本当においしいと感じていたわけです。
この実験は、「価格の高い方が、より満足度を高めている」ということを指し示しています。これをヴェブレン効果と呼んでいます。

ヴェブレン効果を引き起こす要素は大きく2つあります。

一つは、他人より贅沢をしていると感じることにあります。高い価格であるほど、手に入りにくいことを意味し、それが満足度を高めているのです。人に見せびらかしたいという欲求を満たすためともいえます。
「見せびらかすための消費」、「見栄のための消費」に関しては、値段が高いほどよく売れるのです。この現象を見つけたのが、アメリカの経済学者ソースティン・ヴェブレンです。この現象は富裕層に多く見られ、ヴェブレンは「顕示的消費」と名付けました。

もう一つは、購入する前に商品やサービスの品質が分からない場合に起こります。私たちは、「価格が高いのは、それでも売れるからであり、品質が高いからに違いない」と予想しがちだからです。例えば、100円ショップで販売されている化粧品。高い化粧品とさほど品質が劣らないとしても、ちょっと不安に思ってしまいませんか。

私たちは、価格が高いほど欲しくなり、品質も高く感じることがあります。商品そのものが生み出す価値ではなく、価格自体が生み出す魅力であり価値なのです。これが「ヴェブレン効果」なのです。経済学では、「消費の外部性」といったりします。


さて、住んでみないとわからない住宅は、どのくらいのヴェブレン効果が働くのでしょうか。

株式会社ライフブラッサム
FP中野