工事現場の人員構成
工事現場にはたくさんの職人が出入りしています。
街中でヘルメットをかぶった人たちが出入りしている姿を見る機会も多いと思います。
内装工事の場合はなかなか目に触れることはありませんが、繁華街の路面店などではたまに見かけることもあるかと思います。
この工事現場にいる人たちは一体どういう構成になっているのでしょうか。
大きなビルなどを立てる工事現場の場合はまず、ゼネコンと言われる建設会社が仕事を受注します。
一社で請負うことが基本形ですが、JVと呼ばれる共同企業体を作り請負う場合もあります。国家事業などの超大型物件など。
その下に3〜10程度の企業が間に入り末端の職人に行き着きます。10レイヤーという事です。
10社の会社が関わっているということではなく、10レイヤーくらいの中にかなりの数の企業が関わっているということです。
詳しいことは私はそんな巨大プロジェクトに関わった経験はありませんので、わかりませんが。
内装工事の場合はもう少しシンプルです。
弊社が仕事を受注します。その下には各専門職種(大工や塗装、電気、給排水など)の会社もしくは個人に発注をし、その会社の社員の職人か外注の職人が工事をします。
弊社の業務としては
1・仕事を受注する
2・各専門職種の選定、発注
3・集めた専門職種の職人たちの管理をするための現場監督を常駐させ現場を管理する
主にこの3つの業務から成り立っています。
元請けと1次下請け〜職人という多くても3レイヤーです。
おそらくこれが最もシンプルな仕事形態です。
大手リノベーション会社などは元請け、1次、2次〜職人という会社が最も多く4レイヤーになります。
そして現場監督は1次下請けの社員になります。
現場監督の仕事
現場監督の仕事は主に3つあります。
1・品質の管理
2・工程の管理
3・金額の管理
能力によっては1.2のみで3は上司が受け持つ場合は多いです。
弊社の場合も1〜3全てを1人の現場監督で担当できる社員もおりますが、入社2年や3年程度ではなかなか難しい場合もあります。そのため、現場監督は常駐しその上司は2〜3日に1回は現場を訪れて管理するという体制をとっています。
品質の管理
品質の管理の主な仕事は、出来上がりの良し悪しを判断し悪い場合にはやり直しを命じる仕事です。
他にも、専門職種の職人たちは自分たちの仕事の次の工程でどんな事をするのかを把握できないため、工種と工種のつなぎ役という意味合いでの品質の管理という側面もあります。
例えば1000㎜の幅のコの字型の壁を作り、そこにぴったり納まる家具を取付ける場合は
1・壁を立てる職人
2・立った壁に仕上げをする職人
3・家具を作る職人
4・作った家具を取り付ける職人
という4種の職人が登場します。
1の壁を立てる職人が1000㎜ぴったりで壁を立てます。
2の職人が例えば壁紙の場合は0.5㎜厚程度のため、コの字の壁の内側全てをクロス張りすると内寸が999㎜になります。
3の職人が1000㎜ぴったりで家具を作った場合
4の職人は取付けできない!ということになります。
仮にクロスではなかったとしても、1000㎜のところに1000㎜の家具を取り付けるのはちょっと難しいのです。
内装の施工においては1㎜以下のズレに関しては誤差と考えます。
1㎜以下を図るスケールがない為ですし、そういったスケールが無い理由は工事の精度の上限が1㎜程度、よくいっても0.5㎜の為です。
そうすると壁を1002㎜程度で立てるか家具を998㎜で作るかの選択をする必要があります。
さらに、家具の材質や寸法の精度(職人の腕)も考慮し、2㎜のクリアランスではなく5㎜と判断する場合もありますし、0㎜と無茶する場合もあります。
その選択は工種と工種を横断している監督という職種にしかできないのです。
さらには、そこに取り付けるための下地を入れなければならなかったり、電気配線が絡んできたり、給排水設備が入ってきたり・・・
そういう全体像の把握をしているのは工事現場では現場監督のみになるのです。
もちろんそういった判断が必要なくなるための方法論もたくさん開発されています。
新建材と呼ばれる建材などはほとんどが取付る際のエラーを少なくするための作りになっています。
しかしデザイナーや建築家の仕事をしていると、なんだかそういうシビアな要求をいつも突きつけられます。
そのため弊社は必ず現場監督は1人以上の常駐を義務付けています。
既製品の建具や家具などで構成されていれば、現場監督を常駐させる必要がなく弊社は大儲けかもしれません。。。
工程の管理
リノベーション工事を着工する前に必ず工程表を作成します。
何日からフローリングを貼って、何日から塗装をして・・・というやつです。
工程表を作成しないもしくはザックリとしたものしか作成しない業者もいるようですが、弊社の場合は必ず作成し工程表を厳守するという事を義務付けています。
施主の皆様は非常に完成を楽しみにしています。完成だけではなく経過も本当に楽しみです。
私たちは仕事でやっていますから慣れていますが、施主の皆様にとっては人生の一大プロジェクトですから本当に楽しみだろうと思いますし、同時に不安でもあると思います。
工事っていきなり完成するんです。(というように見えるのです)
最後の最後まで本当に大丈夫???と心配になると思います。
そんな不安感を少しでも無くしたいという思いで工程を厳守するということになっています。
例えばフローリング貼りをしていた週の週末に貼り上がっているはずの床を見にいったら全然貼れていない・・・
例えばキッチンが設置されている予定だから夜仕事終わりに見にいったら物すら見当たらない・・・
などそういった事の積み重ねが最終的に不安に感じる要因だと思います。
工事している方としては引渡しには間に合うから大丈夫!と考えているのかもしれませんが、非常に不安ですし苛立ちます。
その積み重ねが引渡しの遅れという事態に繋がるのは間違いありません。
私自身も会社の代表として現場を回りますが、工程表と違っているというのに平然としている社員に対してすごく腹が立ったりはしますので、数年前からはとにかく提出した工程表の通りに工事を進めよう!という方針になっています。
ちなみに独立前を含めて弊社で引渡しに間に合わなかった経験は1度だけです。
東日本大震災の時です。
そういった不測の事態や不可抗力なども発生することはありますし、どうしても職人の手配や製作物の納期の都合、メーカー品の納期の問題で工程がずれることが出てきてしまうのも事実です。
その際は工程表を都度作り直し、改めて提出し説明します。
工程の管理は関わる人(施主だけではなく設計や職人も全て)の不安を少なくするためにも非常に重要視していることです。
金額の管理
これが最もややこしい話ですが、現場監督の仕事としてはまずは職人たちの出面(でづら/何人きたのか)のカウントをすることで、コストを把握するということがあります。
予定を超えないようにしなければならないですし、ヤバそうな時は手伝ったりもする必要があります。
現場進行中に変更がかかることは多くあります。
実際に壁が立ってみたらここに収納が欲しいよね・・・とかちょっとここにフックをつけて欲しいとか・・・
あくまでも予定していた職人の出面で収まれば良いのですが、そういう要望が多くなると予定外の職人を呼ぶなどの変更をしなければならなくなります。
その辺のコストを把握することがまず第一の仕事です。
そして、上記の変更や追加に関連して追加金額を出して欲しいと言われることもしばしばあります。
その場合にも即座に返答ができる方が物事がスムーズに進むため、なるべく金額の管理ができる社員が関係者が集まる予定の日は必ず現場にいるようにしています。
稀に弊社が元請けではなく元請けの下の1次下請けで工事に入ることがあります。
リノベーションの場合はほとんどありませんが、商業施設の場合は「冠」とかいう訳のわからない制度があったりする場合がありなんだかよく分からない業者が「冠料」という金額をとって元請けにしゃしゃり出てくる場合もあります。
また、大金が動く業界ですからなんだかいろんな人が群がってきて、それぞれがフィーを欲しがるというややこしい事態が結構頻繁に起こったりもします。
そういった場合に実際に工事をしている私たちが無邪気に実際にかかってくる金額を言えない場面は非常にたくさんあります。
その辺の事情も理解し、上手に立ち振る舞うことができるようにならなくては金額の管理はできないのです。
うっかり言ってしまおうかと腹立ち紛れに思うこともありますが、それをすると食いっぱぐれるため言いません。。。
入社間もない社員にはちょっと恐ろしくて中々任せられないのはそういった事情もあるのです。
弊社の現場監督が堂々と金額を提示している場合はわけのわからない人に報酬が発生していないということです。
同業者の下請け仕事をする場合は本当にお互い様なため、忙しい時に助け合っているという感覚で付き合えますし、そういう場合は金額感も似ている為あまり問題は起こりません。
「こういう希望があったからこのくらいの金額で言っておいたからね!」程度で済みます。
が、本当にわけのわからない人っていうのはいるもので、そういう人ほどとんでもなく高額の報酬を要求されたりするのです。
恐ろしくて迂闊に何も言えないのです。
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